社労士が答える労務管理のポイント

FAQ

労働時間

 労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」をいうとされています。つまり、実際に業務を行っている時間はもちろん、指定の制服へ着替えることが義務付けられている場合の更衣時間や、業務を行うために待機している時間(手待時間)も含めた時間が、労働時間に該当します。
就業規則や個別の労働契約で具体的に労働時間を決めたとしても、労働時間に当たるか否かは客観的に決まるものであり、現実に使用者の指揮命令下にあって、労働者が自由に休憩等することができない時間であれば、労働時間ということになります。
また、使用者の指示を受けていない、いわゆる自発的残業についても、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間にあたるとされており、自発的残業を労働時間としない為には、使用者は普段から自発的残業等をしないことを明確に指示し、行われている場合には中止させる等の対応を日頃から行う必要があります。ただし、残業しなければ処理しきれない業務量を与えておきながら自発的残業を禁止したとしても、形式的な指示であると判断されてしまい、労働時間に該当することとなってしまいます。

変形労働時間制

 労働基準法では、原則1日8時間・1週間40時間(以下、法定労働時間)を超えて労働させることはできません。(法定労働時間を超えて勤務した時間は時間外手当の支払いが必要となります。)
しかし、病棟の夜勤勤務などの場合、労働時間が1日16時間に及ぶケースなどがある為、変形労働時間制を導入しない限り、法定労働時間内で勤務シフトを組むことはできません。
そこで、ご質問にあるような日勤や夜勤など複雑な勤務シフトのある医療機関が利用しやすい変形労働時間制として「1か月単位の変形労働時間制」が挙げられます。
この「1か月単位の変形労働時間制」は1か月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間を40時間以内となるように、あらかじめ労働日および各労働日の労働時間を決めることで、特定の日(夜勤日など)に8時間を超えて勤務させることや、特定の週(夜勤が重なる週やシフトの都合で休日が少ない週)に40時間を超えたシフトで勤務させることが可能となり、そのシフトどおりの勤務であれば時間外手当の支払いも生じません。(※夜勤勤務の深夜割増手当は生じます。)

 下記のいずれかの手続きが必要です。
  ・就業規則その他これに準ずるものに「1か月単位の変形労働時間制」の内容を定める
  ・労使協定を締結する(所轄の労働基準監督署に提出が必要)

 ①あらかじめシフト表や勤務カレンダーなどで、その月の勤務シフトを具体的に定める必要があります。
②シフト表などで特定した労働日・労働時間を、任意に変更することや延長、短縮することはできません。(任意に延長した時間については時間外手当の支払いが必要となります。)
③妊産婦(妊娠中および産後1年を経過しない女性)が請求した場合は、「1か月単位の変形労働時間制」を導入していても適用除外となる為、1日8時間、1週間40時間(法定労働時間)の範囲内で勤務させなければなりません。
④育児を行なう職員、介護を行なう職員、職業訓練または教育を受ける職員、その他特別の配慮が必要な職員に対しては、必要な時間を確保できるように配慮する必要があります。

宿日直

 労働基準法上の労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうものとされており、仮眠時間等の実作業に従事していない不活動時間が労働基準法上の労働時間に当たるかどうかは、労働者が不活動時間に使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができるか否かにより、客観的に定まるとされています。つまり、不活動時間が労働から完全に解放されているといえない場合には、使用者の指揮命令下にあるといえ、労働基準法上の労働時間に当たると考えられています。
 不活動時間について、労働基準法の労働時間の適用が除外される形で医師、看護師を宿直させるには、労働基準監督署長の許可が必要とされています。ただし、宿直の時間中に行われる業務が、昼間の通常業務の延長である場合には、許可されません。
 なお、労働基準監督署長の許可を受けたとしても深夜割増賃金の支払いは必要ですからご注意ください。

休憩時間

 労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間ですが、休憩時間は「業務から離れることが保障されている時間」です。したがって、例えば休憩中に電話番を任されているような場合は休憩時間とは呼べません。
休憩は継続する仕事による疲労を回復させるためのものになりますので、休憩時間は自由に利用させなければいけません。ただし休憩時間中の外出を許可制にしたりすることはかまいません。 休憩時間の長さは、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上が必要です。休憩をまとめてとるか分割してとるかは特に制約はありませんが、必ず労働時間の途中に与えなければいけません。

年次有給休暇

 年次有給休暇が発生するには次の2つの要件を満たす必要があります。
① 1年間継続勤務していること(初回は雇入れの日から6か月間継続勤務していること)
② 1年間の出勤率(初回は雇入れの日から6か月間の出勤率)が8割以上であること
※欠勤などが多く、出勤率の要件を満たさない場合、その年の年次有給休暇は発生しません
(例)2018年4月1日入社(上記の要件を満たしている場合)
   初回の年次有給休暇発生日(基準日):2018年10月1日
   2回目の年次有給休暇発生日(基準日):2019年10月1日
   ※その後も1年ごとに発生します

 年次有給休暇は正職員のみでなく、準職員、有期契約職員、パート・アルバイトなど勤務日数・勤務時間が少ない者であっても次のとおり発生します。
各職員の労働契約内容を見て、年次有給休暇の付与日数を確認する必要があります。

 原則として年次有給休暇は労働者の請求する時季に与えなければなりません。(時季指定権)
ただし、指定された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるような場合、事業所は休暇を他の時季に変更することができます。(時季変更権)
なお、事業の正常な運営を妨げるかどうかは、事業所の規模および業務内容、その労働者の職務内容・性質、繁忙度、代替要員確保の難しさなどを客観的・合理的に判断しなければなりません。
ご質問のようなケースでは、一方的に病院が年次有給休暇の時季変更を行うのではなく、まずは職場の状況を職員に説明したうえで、該当する職員のなかで年次有給休暇取得日の変更をできる方がいないか交渉してみることから考えてみてはいかがでしょうか。
また、労働者に対して年次有給休暇を取得したことによる不利益取扱い(賃金の減額、精皆勤手当や賞与の算定などについて年次有給休暇取得日を欠勤扱いとするなど)はしないようにしなければなりません。

 年次有給休暇は原則として1日単位で与える必要がありますので、事業所は年次有給休暇の半日単位の請求に応じる義務はありませんが、労働者からの希望に応じて半日単位で与えることも可能です。
なお、半日単位での年次有給休暇を認める場合は、半日の考え方を職場でルール化しておく必要があります。
(例)午前8時30分~午後12時 AM休
   午後1時00分~午後5時 PM休

 労使協定を締結することで、年5日を限度として時間単位で年次有給休暇を与えることが可能です。
 ※労使協定で定める内容は以下のとおりです
 ①時間単位年休の対象労働者の範囲
 ②時間単位年休の日数(5日の範囲内)
 ③時間単位年休1日の時間数
 ④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数(例)2時間、3時間単位など

 年次有給休暇は基準日(年次有給休暇発生日)から起算して2年間で時効によって消滅します。

 年次有給休暇の賃金は下記の3通りがあります。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する額
いずれにするかは、職場のルール(就業規則等)に定める必要があります。
ただし、③は労使協定で定めなければなりません。

今回は、その中で特にご質問の多い②の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」について説明させていただきます。
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」とは、賞与など臨時に支払われる賃金、割増賃金のように所定時間外の労働に対して支払われる賃金は含めません。
ただし、夜勤専門の看護師のようにシフト等で所定労働時間が午後10時から翌朝の午前5時の時間帯を含む場合は、深夜の割増25%を含んだ賃金の支払が必要となります。
また、変形労働時間制を採用している場合は、各日の所定労働時間に応じて支払います。

 年次有給休暇は、労働者の請求する日に与えるのが原則ですが、労働組合や労働者代表と労使協定を締結したときは、その労使協定で定めた日に有給休暇を与えることができます。これを「年次有給休暇の計画的付与」と言います。
計画的付与の対象となるのは、有給休暇のうち5日を超える部分です(前年度の繰り越し分を含む)。つまり、少なくとも5日は労働者が自分の都合で自由に使えるように残しておく必要があります。例えば、20日の有給休暇がある場合、15日までは計画的付与で取得する時季を定めることができます。
計画的付与の方式としては、①事業場全体を休業にする「一斉付与方式」、②部署や班ごとに交代で休業する「交代制付与方式」、③個人ごとに休業日を決める「個人別付与方式」などがあり、職場の実情に合わせて方式を定めることができます。
労使協定において、付与日を決定した後は、その日に労働させることはできませんし、付与日を変更することもできません。一度決定した付与日に、どうしても労働者を出勤させる必要が生じた場合は、労使で協議して、労使協定を締結し直すなどの対応が必要となります。
なお、今般の労働基準法の改正で、平成31年度から、有給休暇の日数が10日以上ある労働者に対しては、毎年5日は時季を指定して有給休暇を与えなければならないこととなりましたが、計画的付与で有給休暇を与えた場合には、その付与した日数の範囲で、時季を指定して有給休暇を与えなくても良いこととされています。

 年次有給休暇には「まとまった日数の休暇を与えることにより、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図る」という目的があり、有給休暇を買い上げることはこのような目的に反することから禁止とされています。
ただし、法律を上回る日数分の有給休暇を買い上げることや、2年の消滅時効により権利が消滅した有給休暇を買い上げることは問題ないとされています。
なお、このようなケースであれば有給休暇を買い上げることは問題ないとされていますが、買い上げないといけないわけではありません。

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